変奏の面白さを味わおう
北海道有朋高等学校(北海道高等学校遠隔授業配信センター)
伊藤 範秋教諭
授業概要
本事例は、国立教育政策研究所による『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 高等学校 芸術・音楽』に掲載の事例を下敷きとし、Flat for Educationを活用して創作と鑑賞の授業を行ったものです。
学習のねらい
対象:高校1年生
(1) 音楽から喚起されるイメージと音楽の構造との関わりについて理解するとともに,創意工夫を生かした創作表現をするために必要な,音楽を形づくっている要素の働きを変化させ,変奏をする技能を身に付ける。
(2) 旋律を知覚し,その働きを感受しながら,知覚したことと感受したこととの関わりについて考え,どのように音楽をつくるかについて表現意図をもつとともに,曲に対する評価とその根拠,及び自分にとっての音楽の意味や価値について考え,音楽のよさや美しさを自ら味わって聴く。
(3) 旋律の変化と雰囲気の変化との関わりに関心をもち,主体的・協働的に創作や鑑賞の学習活動に取り組むとともに,音楽に対する感性を豊かにし,音楽を愛好する心情を養う。
学習活動の流れ
- 「変奏」及び「変奏曲」についての説明を聴き、「六つの変奏曲」(作曲:ベートーヴェン)の曲想の変化を感じ取りながら聴く。
- 「ちゅうりっぷ」の変奏例を聴き、曲想の変化と音楽を形づくっている要素の働きの変化とを関連付ける。
ちゅうりっぷ変奏例1
ちゅうりっぷ変奏例2
Flatを利用し、「ちゅうりっぷ」の旋律を様々に変化させ、曲想の変化を感じ取る。
生徒作品例
① 「かっこう」を主題とした変奏の表したいイメージをもち、どの音楽を形づくっている要素の働きをどのように変化させるかを考え、アイディアシートを作成する。
② 変奏前の楽譜をテンプレートロックなしで配布。
「かっこう」の音楽を形づくっている要素の働きを変化させる。
③ グループでつくった変奏を聴き合い、交換した意見やアドバイスを踏まえて修正したりさらに工夫を重ねたりする。
生徒作品例
- グループで各自がつくった変奏の特徴を踏まえ、発表に向けて配列を考える。
- 作品を聴き合いながら、それぞれの作品のよさや面白さを感じ取る。
- 「六つの変奏曲」を再度聴き、曲想の変化と音楽を形づくっている要素の変化とを関連付ける。
- 変奏の創作の学習を踏まえ、「変奏曲の楽しみ方」について考える。
授業のポイント
Flatの各機能を用いることで、様々な表現を工夫するとともに、学習の段階に応じて音楽を視覚的にも捉えながら学習を進めることができます。
しかし、機能が多いことから「さまざまな機能を試す」点のみに興味関心が向きがちです。そうしたことに興味をもちながらも、最終的には「旋律の変化と雰囲気の変化との関わり」に興味関心をもちながら学習を進めていけるように、発問や展開を工夫していくことが重要です。
評価方法
様々なツールを用いてその効果を試しながら入力していけることから、学習のスタート時点で音楽に関する知識・技能がやや乏しい生徒であったとしても、本題材の学習のでたくさんのことを身に付けることができる可能性を秘めていると感じました。
入力作業と、ワークシートへ考えを整理することとの往還により、音楽の特性に即した思考力・判断力・表現力等が身についていくと思います。
また、Flatにおける「履歴」は、「主体的に学習に取り組む態度」を見とる一助になると感じています。
※題材における評価の詳細は上記「参考資料」をご覧ください。
生徒の反応
「創作」の学習には苦手意識のある生徒が少なくないと思います。
さらに「イメージをもって」「ひとつの作品を完成させる」といった点がハードルを上げているようです。
しかし、もとのメロディーのある「変奏」といった取組であること、また、Flatの特徴である直感的な操作と、すぐに音として作品を確認できる点から、「試しながら」創作の活動に取り組めていたようです。
また、「履歴」を参照し、容易に過去の作業状態を復元できることから、思い切った変更にも取り組めるようで、様々な表現方法の工夫へとチャレンジする姿が見受けられました。
課題を体験
楽譜を編集して変奏に取り組んでみましょう!